朝日新聞の記者である、金成隆一が、トランプ支持者へ取材を行った記録をまとめた、ルポタージュです。
なぜ、トランプを支持するのか、なかなか日本ではいる情報では、理解ができませんでした。
この本を読むことで、自分の中で少しは理解することができたように感じます。

高校を卒業して、勤勉に働けば、豊かに暮らすことができる時代が、アメリカにはかつてありました。
しかし、その時代はグロバーリゼーションにより失われ、中間層は、貧困層への転落の危機に直面しています。
そのことに、アメリカの人々は現状に対して強く不満を持っています。

これは、日本に暮らしている私たちが、格差社会へ危機と不満を持っているとのと決して大きな差はないと感じます。

その人々の不満を集め、変革者として、支持に変えたトランプ。
一般的な人々が、なぜこうも熱狂的にトランプを支持したのかを理解させてくれました。

一方で、トランプの今までの、人生や批判者への執拗な攻撃は、アメリカの将来へ深刻なリスクをもたらす危険性を孕んでいるという示唆を最後に加え、本の結びとしています。

トランプ政権誕生を支えた、アメリカ社会の一方の顔を、白日のもとに照らし出した、読み応えのある1冊です。


アルジャーノンに花束を ダニエル・キース

SFの不朽の名作。
ドラマや映画化されたため名前は有名ですが
あまり小説は読んだことがない方が多いのではないでしょうか。

精神遅滞の主人公(チャーリイ・ゴードン)が手術の結果、
驚異的な頭脳を一時的に手にしながら再び元の状態に戻ってしまう経過を、
主人公本人が書いた経過報告の形をとってストーリーが語られていきます。
ちなみにタイトルの「アルジャーノン」は先行して知能が上昇する手術を受けたネズミの名前です。

最初から最後まで報告書の形式で描かれており、
一人称から離れることはないのですが、
他のキャラクターの内面についても、ありありと描き出しています。

最初の序盤部は、子供が書いたような誤字が散見されるひらがなで書かれた報告書から、
中盤は語彙力が足りないながらもしっかりとした文章になり、
後半になると冷徹な報告書へ、
最終部で最初の報告書の形式へと
だんだんと文体が変化していきます。

この名訳が物語の魅力をアップさせています。
しかし、序盤部のひらがなだらけの読みにくさが
この小説をとっつきにくくしている面もあります。
ここは耐えてください。中盤部からは一気にストーリーが展開していきます。

本小説、最大の魅力は不気味なまでの圧倒的なリアリティ。
まるでノンフィクションではないかと思われるほどです。

手術で知能程度が上がるという点についてはSFですが、
人の感情の動きや出来事については極めて現実的です。

知能が上昇する過程で、
今まで親友だと思ってきた職場の仲間がからかっていただけだと判り
万能の天才だと思っていた大学教授が手探りで研究をすすめている普通の人間だと理解しと
周りの人の知能をどんどんと追い抜いてきます。

その過程で主人公の誠実だった人柄が失われ
傲慢な性格へと変貌し社会とのつながりも断たれていきます。

知能が失われていくことがわかったときの
主人公の苦悩がまたリアルに表現されています。
最後には何もわからなくなってしまった主人公が
「ついしん(追伸)」を書き残すのですが、
これを読んだときは目頭が熱くなりました。

しかし、人間の人生を考えてみれば幼年から壮年へ
知能は上昇しますが、老年になるとだんだんと衰えていくことを
考えれば、私たちの人生をただスピードアップし、
知能の上がり幅を過剰に演出したものにすぎないのかもしれません。
そういう意味で言えば誰しも経験をした内容なのかも。
(痴呆になる過程を理解したまま経験した人はいないでしょうが、、、)

そう考えると知能というのもはかなく、もろいものであることを改めて思い出させられます。
毎日を大切に生きていかなければ、そんな感想を最後に持ちました。



中島美香の歌う映画の主題歌がバックでながれる
映画予告が秀逸です♪
耳からはなれなくなり、
頭の中で何回も再生されちゃいました。

本屋さんで延々と
小さな画面で流されており
ストーリも面白そうだったので
つられて購入しました。

浮気した男の子供を誘拐し
育てた女、希和子と育てられた子、薫 の物語。

血はつながっていないながらも
愛で結ばれていた親子。

しかし、それは警察に逮捕されることで
唐突に終わります。
その瞬間は本当に胸が引き裂かれそうになります。

その後、一時的に逃げていた施設で一緒に
育てられた幼馴染
(しかし主人公は幼すぎて記憶なし)
に連れられ自分を見返す旅に出ます。

一つ一つの情景描写が
丁寧に書かれており、
希和子と薫
二人の主人公に感情移入してしまいました。

感情の機敏についてもよく表現されており
結末がわかっていてもストーリーは面白いです。

映画も良く出来ていました。
誘拐犯役の最高ですね。

邦画で久しぶりに面白いと感じました。
映画とも原作とも
中島美嘉の歌う主題歌「Dear」は
良くあっていると思います。




 作者の辻井喬は、セゾングループの総帥堤誠二のペンネームです。
「いつもと同じ春」は堤家の内実を赤裸々に描いた私小説です。

Wikipediaには自伝的小説と書かれていたので
私は当初、セゾングループの成功、セゾンの文化的経営の軌跡、
を期待して本を購入しました。

しかし、本の中では実業家としての側面は、
脇に追いやられ、まったくといっていいほど
出てくることはありません。

「個人」としての堤誠二、
作家辻井の姿を見せつけられることになります。
百貨店経営では順調にすすみ
父親以上の成果を出しながらも

20年以上前になくなった父親の血に
捕われ続ける筆者。
外国で裁判にかけられた実の妹を見捨て、
神経症的な甥充朗の面倒を見ながらも突き放す。
家長としての責任を果たすこともできなければ
果たすつもりもない主人公。

実業家として成功した人間が、
ここまで内実をさらけ出した文学へ捧げたことは
驚愕である。
(全てが現実ではないだろうが…)

迷いながら進む弱い文学的な人間
まるで実業家にはそぐわない像をつくりだす。

文体は勿体ぶっており、技巧的すぎで、テンポも遅い。
(私小説において欠点ではないのかもしれないが、好きにはなれない。)

しかし、おそらく書かかずにはいられなかった
何かがあったことが感じられる小説です。
書かれて世に出たのは必然とすら感じます。

本の最後には西尾幹二の解説が乗っている。
その中に「もし氏が実業家として社会的に責任ある立場に立たなかったら(中略)氏の文学世界はかなり変わったものになったろうし、(中略)文学として成功しなかったかもしれない」との記述があった。
実業家だからこそ書ける小説でありながら
まったく実業家らしくない小説です。

新刊はもはや手に入らなくなっておりますが
現代でも時代を超えてこの本は読まれるだけの
魅力をなお保っていると感じます。

今回紹介した本

■いつもと同じ春 辻井 喬
ISBN:4101025223 新潮社新潮文庫
新刊を手に入れるのはかなりむずかしいでしょう。古本屋なら置いてあるかも。
私は、古本屋でも見つかられずAmazonのマーケットプレイスで古本の購入をしました。
※タイトルをクリックするとAmazonのサイトにリンクします。

デール・カーネギー著「道は開ける」、原著は1944年に書かれました。本書は、ブームとなっている自己啓発の元祖であると言われています。

60年以上も前の本ですが内容は色あせず、年を追うことに評価は高まっています。
同じカーネギー著作の「人を動かす」とともに長年ベストセラーに名を連ねており、本書をおすすめの本として紹介される方は多くいらっしゃいます。

雑誌などで有名企業等の社長がおすすめ本としてあげているのも見かけたことがありますし、実際につきあいのある人から雑談などのときにすすめられたことも幾度もあります。

最近では、著者「デール・カーネギー」の自伝がスティーブン・ワッツによって執筆され、日本語版が翻訳・出版されました。

この本は第二次世界大戦終結後、アメリカで勃興しつつあった中産以上の階級の人々へ向けて記述されました。

懸命に働きやっと築いた地位を失うことを恐れた、人たちに向けて「悩み」の解消方法が綴られています。

28章の悩み解消法と31編の悩みを解決した人の体験談から構成されており、「悩み」の解消法は、前半がおおまかな基礎的なこと(1日の枠で生きるなど)、後半はより具体的で実践的な方法が記述されています。

書かれている内容が、「一般的」でかつ「実践的」であることがこれほど長い間、人々に受け入れられてきた特徴だと思います。私自身も今までこの本のおかげで悩みを振り切ることができたことがありました。道に迷った時に読むべき本だと思います。

「多くの偉人の言葉」と「悩みを解消した人たちの経験談」が交互掲載されており、前者で内容に重要性・正当性を感じさせ、後者で読者が「共感」を抱けるようになつくりになっています。

体験談が多く綴られていることは、カーネギーが長い間「悩み」について研究してきたことを物語っています。

それは本書が、カーネギーが開催していたサークル(勉強会)で使用していたテクストを元に書籍としてまとめたという由来によるものでしょう。

その長い間使用され、修正を続け琢磨された結果、
濃い内容の書籍になったのでしょう。

掲載されている経験談は、60年も前の人間たちのものだとは思えないほど、共感できる内容がピックアップされています。

悩みを完全に解消することは困難だとしても、和らげることに十分役立つ一冊になると思います。

巷にあふれている、近年発刊された「自己啓発本」を読みあさるよりは、本書1冊で遥かに多くの効果が得られるでしょう。

私自身、自己啓発本を数十冊と読んだ時期がありましたが、この「道は開ける」と「人を動かす」に出会った後、他の本を読んでもこの2冊以上に感銘を受けたことは今までありません。

ぜひ、人生に悩んだときに読んで欲しい本です。あなたにとって、大切な1冊になると思います。 

今回紹介した本

■道は開ける デール・カーネギー
How to Stop Worrying and Start Living
道は開ける 新装版〉ISBN: 9784422100524創元社1728円
新訳 道は開ける (角川文庫)〉ISBN: 978-4041019658角川文庫778円

特装版等、いくつかのタイプがあります。内容は変わらないので安い方で十分かと。長い間、出版されているため古本屋でもよく見かけますが、「値段が高い」もしくは「書き込みがある」ケースが多いです。私が読んだのは創元社版です。読みやすく、わかりやすい名訳だと思います。
角川文庫版は2014年11月に出たばっかりです。読んでいないので翻訳が良いかどうかは不明ですが、文庫サイズというのは大きな魅力です。

人を動かす 新装版 デール・カーネギー
ISBN: 9784422100517創元社 1620円
 カーネギーの著作で最も有名な本です。「道は開ける」が内面的な悩みについて書かれているのに対し、こちらは「人づきあい」の方法が書かれています。最近、「道は開ける2」が出ましたが、これはカーネギー本人の著作ではなく、カーネギー協会がまとめたものです。

■デールカーネギー スティーブン・ワッツ
デール・カーネギー 上>ISBN:9784309246796河出書房新社2160円
デール・カーネギー 下
>ISBN:9784309246802河出書房新社2484円

本文で触れた、カーネギーの自伝は下記の本です。まだ、読んでいませんが、気になっている本のひとつです。(文庫ならすぐ買うのですが、単行本は値段が高い…)著者のスティーブン・ワッツは伝記作家のようですが、日本語に翻訳されているのはこの本のみのようです。本屋で平積みしているのを見かけますので簡単に手に入ると思います。
先日、日経新聞に書評が載っていました。本書に対してかなり好意的な内容でしたね。





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